
う部分もあるんじゃなかろうかという意味で申し上げるわけでございます。 アートマネージャー、特にスペシャル・アートマネージャーの仕事の段取りということで申し上げてまいりますと、まず企画をどう立てるかということで、地域ニーズの把握が非常に重要なわけでございます。皆様方の要望の中でも、こういうことに対します質問が随分ございました。 それで、まず「地域おこしとのかかわり」ということでございます。どんな暮らしのふるさとを創造したいのかということにつきましては、地域の方々のそれぞれの思いがあるんじゃなかろうかと思うわけでございまして、決してホールの方々が、これはいい、あれはいいというふうに自分の感覚でお決めになるものではなくて、まずは地域の方々のニーズをしっかりと吸い上げるということの重要性、これは幾ら言っても言い切れないほど重要じゃなかろうかという気がするわけでございます。これは地域おこしの戦略とのかかわりが非常に強いわけでございます。 私、この間、ちょっと釧路の北海道演劇祭で、紋別市の「海鳴り」という劇団の「流氷の来る街」という作品を見ました。大変感動いたしました。それは、紋別市の床屋さんがまちおこしをやっていたんですが、あることが起こって挫折をしちゃった。そのうちに娘さんが札幌に嫁いじゃって、やっぱり床屋さんをやっていて、赤ちゃんが生まれたので何とか札幌に来て手伝ってくれないかというわけなんです。奥さんは亡くなっちゃって、その床屋さんは流氷を見ながら1人悶々とするわけですね。ふるさとを捨てるそのせつなさと、札幌の娘のところにいて温かく暮らしたいという気持ちと交錯している。そこに、流氷を見に女子学生が入り込んできて、いろんなドラマが起こり、最後に彼は紋別に残ってもう一度まちおこしに挑戦する決心をするんですね。決心をした朝、オホーツクの水平線から流氷がどんと岸に寄せてくるわけでね。 そういうドラマでありましたが、これはやっぱり紋別という土地柄でないと生まれてこない作品だと思います。また、主演した方がめっぽううまくてびっくりしちゃったんですね。聞きましたら、もう何十年も、石にかじりついても芝居はやめないと言って、やってきた方ですね。いわゆる先ほど言った「大バカモノ」ですね。その方の情熱が実って、今やこのすごい演技たるや、もうどんな紋別の特産品以上にすばらしい価値を持っていると私は思いました。このような演劇を見ても、その背景にあるものはその地域に対する愛ですね。もっと言えば、地域全体の方々の、紋別のまちをどうしたらいいかという情熱ですね。悩みであり、苦しみであり、そしてそれを地域に向けていく喜びだろうと思います。
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